配分済みと未配分は、破綻手続で何を変えるのか
これは記事全体で最も覚えておく価値のある区別です。配分済みの地金は法的に保管者のものではないため、管財人は原則としてそれを破産財団に組み入れて他の債権者への弁済に充てることはできません。未配分はその逆で、請求権は他の無担保債権者と同順位となり、回収率は清算の結果次第です。
実務上の留意点が二つあります。
償還のハードルの実数値が、誰が価格を維持しているかを決める
個人保有者は「金を取り戻せるか」を気にしますが、トークン価格を現物金価格の近くに保っているのは、実際には大口で発行と償還を行える機関投資家の裁定取引です。
仕組みはこうです。
したがって償還のハードルは単なる利用者の権利ではなく、価格形成メカニズムの一部です。最低単位が高く、受渡地が不便で、手続きが煩雑であるほど、この循環に参加できる主体は減り、価格維持の頑健性はごく少数の事業者に依存することになります。
コスト構造:プレミアム、発行・償還手数料、オンチェーン送金手数料は別々の費用
両者を比較する際によくある誤りは、二次市場のプレミアムだけを見ることです。実際の保有コストは少なくとも三層で構成されます。
料率は改定されるため、数年前の数字を現状と考えないでください。取引前に発行体の最新約款を直接確認すべきです。比較すべき基準は表面的な価格差ではなく、往復1回を含む1年間の総保有コストです。
購入前に確認すべき四点
以上を実行可能なチェックリストに圧縮します。
この四点はいずれも公開情報で確認でき、要する時間は誤った判断1回のコストよりはるかに小さいものです。
トークン化ゴールドを買う人の多くは、たった一つのことしか確認しません。そのトークンの裏に現物の金があるかどうかです。答えはほぼ常に「ある」です。しかし最悪の事態にいくら取り戻せるかを決めるのは、金の有無ではありません。その地金が法的に誰の名義で登記され、どの法域に置かれ、発行体が破綻したときにあなたが何番目に並ぶのか、という点です。
伝統的な金市場では保有形態が二つに分かれます。配分済み(allocated)とは、番号の付いた特定の地金があなたの名義で登記される形態で、保管庫はあくまで受託者にすぎず、その地金は保管庫の資産には計上されません。未配分(unallocated)とは、発行体に対する金建ての債権を持つ形態で、金は発行体のバランスシート上にあり、あなたはその債権者になります。この違いは平時にはまったく見えませんが、破綻手続では決定的です。配分済みの保有者は自分の地金の返還を主張できますが、未配分の保有者は無担保債権者の列に並ぶしかありません。
主要なトークン化ゴールドはいずれも配分済みを標榜し、地金のシリアル照会を提供しています。これは良い兆候ですが、シリアルが見えることと、法的構造が最後まであなたを守ることは同じではありません。間にはもう一層あります。登記上の所有者は誰か、そしてその構造がどの国の法に服するのか、という層です。
PAX Gold(PAXG)はPaxos Trust Companyが発行し、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)から信託会社として規制を受けています。1 PAXGは、ロンドンの専門保管庫に置かれたLBMAのグッドデリバリー基準を満たす金1オンスに対応し、保有者はウォレットアドレスから割り当てられた地金のシリアル番号を照会できます。信託構造の本質的な意味は、顧客資産がPaxos自身の資産と法的に分別される点にあり、しかもその分別は企業の約束ではなく州の規制上の要件です。
Tether Gold(XAUT)は英領ヴァージン諸島に登記されたTG Commodities Limitedが発行し、金はスイスの保管庫に置かれています。1 XAUTも同様に配分済みの金1トロイオンスに対応し、シリアル照会も可能です。異なるのは、NYDFSに相当する単一の監督当局が存在しない点で、その代わりにオフショア法人の構造とスイスでの現物保管という組み合わせが置かれています。これが必ずしも安全性の劣後を意味するわけではありませんが、問題が起きた際に権利を主張する法域、利用できる救済手段、得られる情報開示の水準が、州規制下の信託とはまったく別物になることを意味します。
いずれも約款上は現物の金を償還できると記載していますが、その敷居には大きな差があります。PAXGの現物受渡はLBMA適格地金1本単位、約400オンスであり、ドル換算では6桁に達します。したがって少額の保有者は現実には現金に換えるか、市場で売却するしかありません。XAUTの現物償還は50トークンからで、受渡地はスイスです。引き取り、保険、輸送はすべて自分で手配する必要があります。つまり約款に書かれた「償還できる」は、大多数の個人にとって、存在はするが行使できない権利です。
シリアル照会が証明するのは、その地金が存在し登記されているという事実だけで、トークン発行量が地金の総量を超えていないことまでは証明しません。重要なのは、プルーフ・オブ・リザーブの頻度、署名する会計事務所、そして対象範囲が資産側にとどまるか負債側まで及ぶかです。トークン化ゴールドは、資産が数えられ計量単位も標準化されているため、準備の証明が比較的容易です。だからこそ、ある発行体が報告頻度を下げたり範囲を狭めたりしたとき、そのシグナルは他の現実資産よりも強い意味を持ちます。デジタル資産カストディの体制も同様に確認すべきで、保管庫の運営者は誰か、保険は付されているか、地金が他の用途に流用されていないか、という点が問われます。
トークン化ゴールドを持つ目的が、特定の国の信用に左右されない資産をオンチェーンで保有することにあるなら、比較すべきはプレミアムが0.数パーセント低いかどうかではありません。破綻時の請求順位、償還権を実際に行使できるかどうか、そして発行体の開示頻度と範囲、この三点です。この三点が、極端な事態においてあなたの手元に残るものを、地金にするか、現金にするか、あるいは順番待ちの整理券にするかを決めます。数ベーシスポイントのプレミアム差は平時の保有コストを決め、法域と構造の差は、何かが壊れた日にあなたの元本を決めます。